「ビールより安い」覚醒剤の脅威 乱造で急落、運び屋は10代前半

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
ミャンマーからタイ北部に覚醒剤約200万錠を密輸しようとしたとして逮捕されたバイク集団の一員。サドルバッグに覚醒剤を隠していた=タイ北部チェンライで2024年3月4日、ロイター
ミャンマーからタイ北部に覚醒剤約200万錠を密輸しようとしたとして逮捕されたバイク集団の一員。サドルバッグに覚醒剤を隠していた=タイ北部チェンライで2024年3月4日、ロイター

 ミャンマー国軍のクーデター以降、無法地帯と化した北東部シャン州で違法薬物の製造量が急増している。隣国タイに流れ込む錠剤型覚醒剤の末端価格は1錠35バーツ(約147円)まで暴落した。周辺地域に薬物汚染の脅威が広がり、その影響は10代前半の幼い子どもにも及んでいる。

 「二つ購入すれば一つ無料。バンコクのどこでも配達します」――。

 ネット交流サービス(SNS)に「ハイ」と打ち込んで検索すると、こんな投稿がいくつも現れる。英語で「気分が高揚する」という意味の「high」をタイ語の音に置き換えたこの単語は、覚醒剤の密売を示す隠語だ。取り締まりに当たるタイ当局の捜査関係者は「つまり、ミャンマーから大量のクスリが入ってきて、タイでも『おまけ』を付けられるほど安く売られているということだ」と解説する。

 投稿の多くには、違法薬物とみられる写真とともに、無料通信アプリ「LINE(ライン)」のアカウントが記されている。ラインで売人と連絡を取り合った後、提示された金額をアプリなどを通じて支払えば、フードデリバリーのように指定の場所まで配達される仕組みだ。

 国連薬物犯罪事務所(UNODC)の2023年の報告書によると、タイ国内で販売されている覚醒剤のほとんどがミャンマーから流入する。タイ国内では、安いものなら1錠1ドル程度で取引され、20年の2ドルから急落。日本円にして1錠150円程度で売られ、1本40バーツ(約168円)程度で買える350ミリリットル入り缶ビールの値段を下回った。

値崩れの背景に…

この記事は有料記事です。

残り1891文字(全文2537文字)

あわせて読みたい

この記事の筆者

アクセスランキング

現在
昨日
SNS

スポニチのアクセスランキング

現在
昨日
1カ月