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SNSで接触して恋愛感情を抱かせて金をだまし取る「ロマンス詐欺」。4月に金を振り込む寸前で被害を免れた大阪府内の女性(70)が取材に応じ、心のすきにつけ込むその手口を明かした。(北島美穂)
3月下旬、女性のSNSアカウントに男から友達リクエストが届いた。「メル友になるのかな」と女性は警戒せずに応じた。
「63歳・春戸一郎」を名乗る男は、幼い頃に父を亡くし、母親の故郷・米国で育った。医師となって今は中東の戦地にいる。娘は英国の寄宿舎暮らし――などと語った。
これが自分だと送られた画像には、鏡に映った男性の姿。「戦禍の町」や「負傷した同僚」の画像も送られ、女性は「危険な状況で、かわいそうだ」と思った。
女性は夫と別れて一人暮らし。早くに両親を亡くした境遇もあって、男に親近感を抱いた。男から早々に「愛してます。妻になってほしい」と求愛された。
4月8日、「米国に帰る申請を代行してほしい」と頼まれた。費用の70万円は帰国後に返すから、と送金先に「米国国防総省の担当者」の口座を伝えられた。
女性は10日、住吉我孫子東郵便局を訪れ、送金を試みた。窓口で方法を尋ねる女性の様子に、対応した男性(50)は詐欺と判断。住吉署に通報し、被害を未然に防いだ。
同署は24日、男性に感謝状を贈呈。式に出席した女性は「詐欺の被害者は生まれてほしくない」と卑劣な犯罪に憤った。
警察庁のまとめによると、昨年の全国のロマンス詐欺被害認知件数は1575件で、被害額は177億3000万円に上った。同署の信賀治男生活安全課長は「一度金を渡すと、次は投資話を持ちかけるなど要求が続くケースが多い」と注意を促した。