中成堂歯科医院(埼玉県川越市)…祖父が立った診療室

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 大正や昭和の建物が保存され、独特の景観をなしている埼玉・川越の街。観光客でにぎやかな一番街をそれると、裏通りに 瀟洒しょうしゃ な洋風建築が現れた。1913年(大正2年)に住居兼用として建てられた「 中成堂ちゅうせいどう 歯科医院」は、今も地域の人たちが治療に通う現役の施設だ。

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建物がかわいいと通院も楽しくなりそう。外壁は10年に1度ほど塗り替えているそうだ
建物がかわいいと通院も楽しくなりそう。外壁は10年に1度ほど塗り替えているそうだ

 ライトグリーンの横板を張った外壁は「イギリス下見」と呼ばれる様式だという。1階に両開きの窓、2階には上げ下げ式の窓。周囲には赤レンガの塀を巡らせている。絵本やアニメに出てくる一軒家のようで、通りすがりの人たちが「かわいいね」と言い合いながら立ち止まった。

今では珍しい両開きの窓。グリーンの外壁に白枠が映える
今では珍しい両開きの窓。グリーンの外壁に白枠が映える

 医院の理事長、中野文夫さん(55)の祖父・清さんが、別の歯科医院だった建物を買い取ったのが31年。昭和初期から戦後にかけ、地元の歯医者さんとして頼られる存在だったが、75年に清さんが亡くなると閉院。以降は一家の住まいとして、診療室は子ども部屋、スタッフルームは両親の部屋になっていた。

 歯科医院を再開させたのは27年後の2002年。歯科医になっていた文夫さんが、現在の中成堂歯科医院を開業した。「私自身、ここで祖父に虫歯を治療してもらった思い出がある。近所の人々からも『清さんに診てもらっていた』と話されることが多く、自然に歯科医院を再開したいと願うようになっていた」と文夫さんは言う。

 再開にあたっては、建物の骨格はそのままに、修繕が必要な部分のみを改修した。待合室にはアンティークな木製の椅子を置いている。天気がいい日は窓から朗らかな陽光が差し込んで、緊張しがちな治療前の気分を和らげてくれそうだ。

祖父と同じ場所で歯科医院を営む中野文夫さん
祖父と同じ場所で歯科医院を営む中野文夫さん
昭和初期の診療室。治療をしているのは祖父の清さん
昭和初期の診療室。治療をしているのは祖父の清さん

 文夫さんは「この建物があるおかげで、街の人たちによく声をかけてもらえる。これからも地元で愛着を持ってもらえるよう、ほっとくつろげる歯医者を続けていきたい」と話した。(文・内山景都 写真・今利幸)

住所  埼玉県川越市幸町13の5

アクセス  西武新宿線本川越駅から徒歩13分、東武東上線川越市駅から徒歩16分

メモ  受診者以外には内部非公開。冬は建物にイルミネーションを施している

問い合わせ  049・222・0035

記者のお気に入り…芋菓子に歴史あり

 川越といえばサツマイモ。一番街で「芋菓子の歴史館」の看板を見つけた。のれんには「元祖 芋菓子 亀屋栄泉」とある。気になって入ってみた。

 1階の店舗にはたくさんの芋菓子。少し急な階段を上がると、屋根のはりがむき出しになった2階に歴史館があった。明治以降の店の歴史がわかるほか、大正期の芋菓子の袋、菓子作りの道具などが展示されている。

 一通り見学して下りると、歴史館で「明治からある」と説明されていたサツマイモ煎餅が販売されていた。社長の中島文昭さん(69)は、「川越の伝統的なお菓子といえばこれ。店も歴史館も気軽にのぞいてほしい」と話した。(内)

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