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パリ五輪の開幕まで、26日で3か月となった。新競技として採用されたのが、米国発祥のダンス「ブレイキン」。日本勢は国際大会の表彰台の常連で、メダル獲得が期待される。選手らは「五輪で魅力を広め、ブレイキンの振興につなげていきたい」と意気込む。(上田惇史)
「かっこいい」
「五輪はダンサーが誰も立ったことのない舞台。そこに上がることを目指し、死に物狂いで練習していきたい」。菱川一心選手(ダンサー名ISSIN)(18)は、こう語る。
競技を始めたのは、8歳の時だった。姉の影響でダンスに興味を持ち、父が連れて行ってくれた教室で、ブレイキンに出会った。動きが派手で「かっこいい」と魅せられた。
15歳以下の国内大会に11歳で出場して優勝。その直後に京都の強豪チームに加入し、週末は地元の岡山市から電車やバスで通った。メンバーの家に寝泊まりさせてもらいながら練習し、実力を磨いた。
片手で逆立ちして体を何度も回転させたり、頭頂部だけが地面についた状態で旋回したりと、大技の「パワームーブ」を得意としている。「見たことのない技を披露して観客をアッと言わせるのが好き」
技の引き出しを増やすため、ほかの有力選手の踊りを動画で研究。独自の技を思いついたら、いつもポケットに入れている「ネタ帳」に書きとめる。
五輪予選の世界ランキングは9位。出場には5、6月に行われる予選を勝ち抜く必要がある。「五輪に出たら、みんなの記憶に残るようなダンスを見せ、爆裂したい」と宣言する。
独創性カギ、心理戦も
ブレイキンは、1970年代に米ニューヨークで、ギャング同士の争いを解決させる平和的手段として始まったとされる。
即興で流れる音楽に合わせて踊るのが特徴で、相手と交互に演技する。5人の審判が技術、多様性、完成度、独創性、音楽性の五つの要素をもとに採点し、勝敗が決まる。
中でも、独創性が大切とされている。同じ技の繰り返しや、相手の技のまねは減点対象となる。相手が失敗したり、同じ技をしたりしたら、選手自ら審判や観客にアピールする心理戦の側面もある。若者を中心に世界的に広まっており、ダンサーは「Bボーイ」「Bガール」と呼ばれる。
五輪競技になるきっかけは2018年、15~18歳対象のユース五輪ブエノスアイレス大会で採用されたことだった。大会での盛り上がりを受け、若い世代を取り込みたい国際オリンピック委員会が20年12月、パリ五輪での採用を決めた。
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