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高額報酬をうたって犯罪行為に巻き込む「闇バイト」を防ごうと、福井県警は仁愛大の安彦智史准教授(情報学)と、SNS上で実行役などを募る投稿をAI(人工知能)が自動で検知するシステムを共同開発した。県警は2月に本格運用を開始しており、25日に報道陣に公開した。(荒田憲助)
「この投稿は、犯罪の実行者を募集する不適切な書き込みです」。AIがSNS上で見つけ出した有害とみられる投稿に、捜査員が警告のメッセージを返信していく。
X(旧ツイッター)やインスタグラムでは、「闇バイト」や「裏バイト」といった言葉と共に、「月給100万円~、リスクなし」「稼げる保証あります」などと関心を誘う文言が並ぶ投稿が繰り返されている。
県警は、こうした投稿に応じた人が、特殊詐欺で現金を被害者から受け取る「受け子」などの実行犯になっている事例があると指摘。実際に2022~23年には、SNSをきっかけに特殊詐欺の一端を担ったとして、11人を摘発した。県外でも、闇バイトに応募した若者らが、「ルフィ」と名乗る男らの指示で強盗事件を各地で引き起こし、社会に不安を与えている。
一方、投稿は時間を選ばずに多数行われる上に、闇バイトの求人とは関係のない投稿と判別する必要もある。そのため、捜査員が1件1件確認するには膨大な手間がかかっていたという。
こうした状況を効率化するため、県警は約200万円をかけ、安彦准教授とシステムを開発。闇バイトの求人に関連する投稿をAIに学習させ、実行役を募っているとみられる情報と、他県警の注意喚起などの無害なものを自動で判別する。
検知した投稿を捜査員が確認して警告を送る運用にしたことで、人の目で募集情報を探していた従来の手法と比べ、Xでは2倍、インスタグラムでは34倍の速さで警告を出せるようになった。Xだけで、毎月約6000件の投稿をチェックしているという。
安彦准教授は「機械が得意な作業をシステム化することで、人間の作業が効率化できる。さらに改良していきたい」と語る。県警は「悪質な犯罪に巻き込まれるという事態を未然に防いでいく」としている。