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知床半島沖で乗員乗客20人が死亡し、6人が行方不明となった観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」の沈没事故から2年を迎えた23日。斜里町で開かれた追悼式には、遺族や地元の関係者、町民らが参列し、花を手向けた。「みんなのことを決して忘れない」。訪れた人々は犠牲者への思いを胸に、安全への取り組みを進めていくことを誓った。
2年前、カズワンの同業者から最初の118番があった午後1時ごろ。知床の空は厚い灰色の雲が覆い、海では波しぶきが上がっていた。「あの日も知床は似たような天気だった」。羅臼町の漁師で事故後、ボランティアとして行方不明者らの手がかりを探す活動をした桜井憲二さん(60)は、2年後の空に当時の景色を重ねた。
「残り6人を見つけてあげることができなくて残念だった。家族の気持ちを思うと本当につらい」。献花後、桜井さんは涙を浮かべながらこの2年間を振り返った。
追悼式前に開設された町役場と漁村センターの献花台には、祈りをささげようと多くの人々が訪れた。
事故当初から遺族らと向き合い、「自分にできることはないか」と自問自答してきた、ホテル従業員の杉浦登市さん(62)もその一人。発生時はカズワン運航会社の社長が運営する旅館で働き、全国各地から駆けつけた家族に寄り添った。
杉浦さんは「知床が、ご家族が来て笑顔で過ごせる場所になってほしい。事故の話がタブーにならない環境にしなくてはいけない。そのためにできることは事故を『忘れない』ことだと思う」とかみしめるように語った。
これまでに10回近く斜里町内でコンサートを開き、「いとしき知床」なども作曲した大阪府出身のピアニスト、西村由紀江さん(56)は「知床から元気をもらったお返しをしたい。少しでも癒やされ前向きになるお手伝いができれば」と献花台前に設置されたピアノで演奏を披露した。
町が2年間開設してきた献花台は、5月6日に受け付けを終了する。斜里町のパート従業員の女性(72)は「献花台がなくなっても自宅で、心の中で思い続ける」と誓った。【金将来、伊藤遥、本多竹志】
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