コロナ禍で営業続けたカラオケ店への時短命令は「不合理」 前橋地裁、鹿児島県の過料認めず

 2024/03/28 07:10
営業時間短縮命令が出され人通りが途絶えた飲食店街=2022年3月、鹿児島市の天文館
営業時間短縮命令が出され人通りが途絶えた飲食店街=2022年3月、鹿児島市の天文館
 2022年の新型コロナウイルス「まん延防止等重点措置」適用中、鹿児島県の営業時間短縮命令に応じなかった県内の「カラオケまねきねこ」4店舗=コシダカ(前橋市)が運営=について、前橋地裁が発令要件の「特に必要がある」場合に当たらないとして、県が求めた過料を科さない決定をしたことが27日までに分かった。鹿児島県の時短命令を不合理とした司法判断は初めて。

 政府は22年1月、コロナ対応の特措法に基づく「まん延防止等重点措置」を県に適用。解除される同年3月6日まで、県は全ての飲食店に時短営業を求めた。要請に応じなかった同社の4店を含む16店舗に時短命令を出し、店名を県のホームページで公表。従わなかった15店舗に20万円以下の過料を科すよう、経営者の住所がある各地の裁判所に通知した。

 このうち、前橋地裁は当時の状況などから命令の必要性の是非を判断し、22年9月30日付で過料に処さない決定をした。

 同地裁は決定で、県は店舗の感染対策の実施内容、利用者の人数など具体的な営業状況を確認していないと指摘。県が実施した学識経験者への意見聴取についても「県内全域の飲食店全般の時短継続が妥当だとするもので、店舗ごとの事情についての意見はない」とし、4店への時短命令は特措法が定める「特に必要があると認めるとき」には該当しないと結論づけた。

 決定を不服として、前橋地検が東京高裁に抗告したが棄却され、23年8月に決定は確定した。

 時短命令を巡って同社は22年7月、「憲法が保障する営業の自由を侵害する」などとして国と県を相手に損害賠償と命令取り消しを求め提訴。鹿児島地裁で審理が続いていたが、過料審判の確定を受け23年11月、訴訟を取り下げた。

 同社は代理人を通じて「当社の主張が正当なものと認められたと考えている。引き続き安心安全な店作りに努めていく」とコメント。県は「裁判所に過料の通知をした時点で当事者ではないのでコメントする立場にない」としている。

営業時間短縮命令 新型コロナウイルス対応の特別措置法が2021年2月に改正され、都道府県知事は「緊急事態宣言」や「まん延防止等重点措置」に基づき、正当な理由なく営業時間の短縮要請を拒んだ事業者に命令できるようになった。特措法は感染拡大防止のため「特に必要があると認めるときに限り」命令できると規定。命令に従わなかった場合、過料が科される。鹿児島県は21~22年、32店舗に時短命令を出した。