愛情いっぱいの苦言に、奮起するはずだ。ソフトバンク・武田翔太投手(29)が右肘内側側副靱帯の炎症と浅指屈筋の軽度の肉離れのため、今季中の復帰が絶望的となった。覇権奪回を狙う藤本ホークスにとって、勝負の9月を前に実績ある右腕の離脱は大きな痛手。昨オフに4年契約を結び、球団への恩返しに燃えていた右腕にとっても失意の離脱となった。

 武田は27日の日本ハム戦(札幌ドーム)に先発するも、4回の投球練習中に右ヒジに異常を訴えて緊急降板。29日に登録を抹消されていた。今春キャンプ中にも広背筋付着部炎を発症して離脱。開幕に出遅れて7月に中継ぎとして一軍に戻り、8月からは先発ローテーションの一角として好投が続いていた矢先、再び故障に見舞われた。

 情けをかけられることを嫌う男に、容赦なく苦言が呈された。声の主は、斎藤学投手コーチ。「残念は残念。でも、せっかく先発に回ったのにあれくらいしか続かなかったか…という残念な気持ちも正直に言えばある。春も離脱して、今回も同じように耐えられないというのであれば、オフにもう一度体をつくり直さないと(今後も)1年間ローテを守ることができなくなってきているんじゃないかという心配がある。そこはタケとしっかり話をして伝えたい」。昨季まで長くリハビリ担当コーチを務め、武田の既往歴と性格を熟知する斎藤コーチらしい言葉だった。

 かねて武田は「ふがいない投球をした時は、変な気遣いはいりません。ドンドン指摘してください。ダメな時は耳の痛いことも言ってください」と周囲に公言してきた。11連戦を控えるなど首脳陣が9月の戦いに頭を悩ませる状況で、故障とはいえ戦場に立てない申し訳なさと悔しさを抱えているはずだ。ただ、武田の野球人生は今後も続く。斎藤コーチの言葉は、前進を促すための“愛のムチ”だった。

 ポテンシャルの高さは誰もが認めるところ。メッセージの「真意」は通じている。ターニングポイントとなるか――。